中国における労働契約終了時の経済補償金直前12か月の中に産休期間が含まれている場合の計算方法
2022-10-11 14:57阅读:
最近、あるクライアントから、次のような質問を受けた。
「ある従業員と労働契約の終了を交渉しようと考えています。その従業員が産休を取った期間が直前12か月の中に含まれている場合、経済補償金はどのように計算したらよいのでしょうか。」
中国労働契約法第47条は次のように定めている。
「経済補償金は、労働者の会社における勤続年数に基づき、満1年につき1か月分の賃金を基準として、労働者に支払う。6か月以上1年未満の場合は、1年として計算する。6か月に満たない場合は、労働者に対し半月分の賃金を経済補償として支払う。」(47条1項)「月額賃金とは、労働者の労働契約解除又は終了前12か月間の平均月給をいう。」(47条3項)
それでは、過去12か月の中に、その従業員が産休を取った期間が含まれている場合、経済補償金を計算する際に、その受け取った出産手当を給与として計算すべきか、それともこれを控除すべきか、あるいはまた、さらに別の計算方法があるのか。
この問題については、中国全国一律の規定がない。しかも、明確な規定はどこにもないようである。
北京市人力資源社会保障局のウェブサイトで
は、この問題が労使紛争の典型例として紹介されていた。当該典型例によると、北京市の見解は、「北京市企業従業員生育保険規定」第
15条第2項により、出産手当は産休期間中の給与であって、労働報酬に属し、経済補償金を計算する際には、出産手当を月額賃金の計算基数に入れるべきである」というもののようである
[1]。
それでは、上海でも北京と同じように扱われるのであろうか。上海市人力資源社会保障局のウェブサイトにおいては、類似のケースや回答は見当たらなかった。裁判所が示した類似判例を調べても、裁判所の見解は一貫していない。そこで、上海市人力資源社会保障局に電話で確認したところ、上海では、経済補償金を計算する際に産休期間と出産手当は除外すべきであるとの回答を得た。即ち、直前12か月に産休期間が含まれている場合、直前12か月の平均月給ではなく、直前12か月から産休期間を除外した期間の平均月給を計算するという見解が示された。
女性従業員の産休はもともと有給休暇であり、給与を支払う主体が使用者から社会保障部門に変わっただけである。北京と上海では、出産手当の計算基準に若干の違いがあるが、大きな違いではない。
北京では、出産手当は、従業員本人が出産した月の社会保険納付基数を30で割り、産休日数をかけて計算している。出産手当が本人の給与基準を下回る場合、使用者は差額を追加で支払わなければならない
[2]。北京では、社会保険納付基数は従業員本人の前年度の平均月給とされている。なお、社会保険納付基数は、北京市の前年度の平均月給の60%を下限、北京市の前年度の平均月給の3倍を上限としている
[3]。北京市の出産手当を計算式で表示すると次の通りとなる。
北京:出産手当=従業員が出産した月の社会保険納付基数/30×産休日数
上海では、女性従業員の毎月の出産手当は、本人が出産又は流産をした月における都市養老保険納付基数に基づいて決定される
[4]。出産又は流産した女性従業員が享受した出産手当が当人の享受すべき月給に達していない場合、使用者は当人の月給と出産手当の差額を追加で支払うとされている
[5]。実務からみれば、上海の出産手当は、女性従業員が所属する使用者における前年度従業員平均月給を基準として支給され、その支給額が当人の月給に不足している分は、使用者が追加で支給している。
このように上海においても、出産手当は産休期間中の給与に相当すると解釈されており [6]、出産手当が従業員本人の月給に達していない場合は使用者が差額を追加で支給する方法によって、従業員が産休期間中も出産前を下回らない待遇を享受できるようになっている。そうであれば、上海においても、経済補償金を計算する際に、産休期間と出産手当を除外して計算する必要はないのではないか。
例えば、平均月給が10,000元であるA社で、月給11,000元のBさんと月給9,000元のCさんが働いており、二人とも5か月間の産休を取った場合を考えてみよう。5か月の産休期間と出産手当を除外すると、Bさんの直前12か月の平均月給は11,000元で、Cさんの直前12か月の平均月給は9,000元となる。それに対し、仮に産休期間と出産手当を除外しないとすれば、Bさんの直前12か月の平均月給は同じく11,000元であるが、Cさんの直前12か月の平均月給は(9,000元×7か月+10,000元×5か月)÷12か月=9,417元となる。したがって、産休期間と出産手当を除外する意味は、実際の給与が使用者における前年度従業員平均月給を下回る女性従業員の経済補償金の計算基数が、産休期間と出産手当を含めた給与を基に計算した場合よりも低くなるようにする点にあることになる。
それでは、直前12か月に含まれる産休が丸数か月ではない場合、経済補償金を計算する際に除外する産休月数はどのように計算したら良いか。筆者がこの点を上海市人力資源社会保障局に電話で確認したところ、従業員に有利に扱うという原則に基づき、丸数か月に換算して除外するとの回答を得た。即ち、例えば、直前12か月に含まれる産休日数が4か月以上5か月未満の場合、産休期間を5か月として除外する。例えば、Cさんの直前12か月に含まれる産休日数が4.1か月であったとすれば、Cさんの直前12か月の平均月給は、9,000元×7.9か月÷7か月=10,157元となる。
このように、直前12か月に含まれる産休日数が丸数か月ではない場合に、除外する月数を多めにすると、従業員の直前12か月の平均月給は高くなるから、確かに、従業員に有利になる。しかし、産休日数が丸数ヶ月をどの程度上回るかによって、Cさんの経済保証金の額は大きく揺れ動く。従業員に有利に扱うのが狙いであれば、経済補償金は、産休期間と出産手当を最初から除外しないで計算した方が合理的な金額となり、誰もが納得しやすいのではないか。実際の給与が使用者における前年度従業員平均月給を下回る女性従業員の場合は、給与水準がもともと高くないため、出産手当を月額賃金の計算基数に入れて経済補償金を計算しても、当該使用者にとって、費用が高すぎることになるおそれは少ないであろう。
[1]
http://rsj.beijing.gov.cn/bm/ztzl/dxal/201912/t20191206_880161.html
[2]
「北京市企業従業員生育保険規定」(北京市企业职工生育保险规定)第15条
[3]
「北京市企業従業員生育保険規定」(北京市企业职工生育保险规定)第7条第3項
[4]
「上海市都市生育保険弁法」(上海市城镇生育保险办法)第15条第1項
[5]
「上海市都市生育保険弁法」(上海市城镇生育保险办法)第15条第4項、「上海市都市生育保険弁法実施細則」(上海市城镇生育保险办法实施细则)第12条
[6]
http://rsj.sh.gov.cn/tfkcx_17604/20200617/t0035_1369279.html